ゆるふわブラックファンタジー 隣のずこずこ
2018年のファンタジーノベル大賞をとった作品。
結論から言うとダークファンタジーだった。
ただ全体的な語り口調は、ユーモラスで、怖がらせるようなテイストではない。
むしろ田舎の少しうがってはいるが、普通の中学生が主人公で、シリアスなシーンもあるが基本的にはのほほんとした田舎の村が舞台だ。でもこの村と内容の対比が面白い
情景描写が上手い
読んでいて引き込まれる文章だった、一見するとダラダラ心情の会話文が長いなと最初は感じたけれども、その主人公の感じた肌触りが伝わってくるように、描写がありありと表現されていて、読んで行くうちに自然と引き込まれた。
生きること、一生の意味とは
この話を読んでいるとそのテーマを考えされられる。少しネタバレにはなるが、簡単にいうと理不尽にタヌキに食べられて、街ごと消されるという話が、この話の大筋だ。
その中で、いろんな人がいろんな最期の迎え方について、考え動いている。
それをある程度客観視しながらも、主人公自身も意味を考え出していく。
この著者自身も20代で、おそらく東日本大地震などを経験したからこそ描いた小説ではなかろうか。
一生 = 明日までかもしれない
一生と書くと長い年月の積み重ねで、現実感は湧かないが、この一生という抽象表現を具体化すると、それは明日かもしれない。
安易に一生という言葉を使うのは危険かもしれない。
そう思うと、人生は長いものという認識があるが、それは間違いなのかと思う。
そんな思いを抱いた小説だった。