森見文学の始まり:太陽の塔
日本ファンタジーノベル大賞をとったこの作品を前々から読んでみたいと思っていたところたまたま見かけたので読んでみた。
森見登美彦文学の原点
イギリス文学のような独特な私語りの表現。言葉遊びが随所に見られる。基本的には自分語りなのだが、その言い回しが面白いというか独特の著者の感性が現れている。これが文体の味というべきものなのだろうか。なかなか真似ができたものではない。
キャッチャー・イン・ザ・ライを思い出すような、僕の穿った世間にたいする見解を聞いているとこっちまで口調が移りそうである。やれやれ。
自分が悪いのではない、世間が悪いのである。能ある鷹は爪を隠すというか、隠しすぎて自分でもどこに爪があるのか見失っている。のような表現のオンパレードで独特の文体のリズムがある。
まだ原点のため荒いところが多く、ストーリーとしては満点!とかではないが、森見登美彦好きとしては読んでおいて損はないのではないだろうか
幸福論に関する独特な表現
好きなのは幸福についての独自の見解・表現である。みんなが幸福になればいいみたいなそんなことを甘く語るような文学ではない、あくまで僕が幸せになるために意地汚いでも愛らしい森見幸福論は好きだ。
みんなが不幸になれば、僕は相対的に幸せになれる
幸福が有限の資源だとすれば、君の不幸は余剰を一つ生み出した。
喜劇でもありどこか哀愁漂う独特の世界をお楽しみあれ。
☆3